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セブン&アイから考える金融改革とM&A

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 一昨日のセブンイレブンやイトーヨーカ堂を運営するセブン&アイホールディングスに対する外資企業の買収提案には、多種多様な感想を皆さんが持ったかと思います。この買収提案を経営者は飲むかどうかは我々は知りようがないので、何とも言いようがありません。一消費者としてもこれから利益、不利益どちらを被るか読めません。

 

 そのような状況の中、私が見なければならないと思っているのが、行政がどう対応するかということです。私はこの買収提案は、日本のここ数年の金融市場の改革からもたらしたものであると思うし、今回のケースでの行政の対応は今後の海外投資家が日本市場をどう見るかという試金石となりうると思うのです。

 

 日経の昨日付の記事から拝借すると、従来までの国内企業は持ち合い株式や事前警告型の買収防衛策によって割安な株価でも買収されるリスクは低かったと言われます。しかし、東証の市場改革と経産省企業統治指針の導入により、外資企業の国内企業買収の敷居は低くなり、今後M&Aが増加することが予想されます。

 

www.nikkei.com

https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831003/20230831003-a.pdf

 

 市場の活性化策を講じると当然、外資からのM&A提案も活発化しますが、特に国威を異常に気にする一部の人からしたら、そのような動きには否定的になりがちで、特に今回のような日本を代表するリテール会社が買収の対象となると、経産省などの省庁も横やりを挟んでくるのではないでしょうか。

 

 当然、経営者は企業統治指針に書かれているように、株主利益の側面から今回の買収提案を検討するでしょう。そして検討の結果、提案を拒否するとします。それは正当です。金融市場もその決定を評価するでしょう。ただ、省庁が国内の過激な世論への対応や自分達の権限が狭まるといった観点から、買収先に圧力をかけてくるといったことがあるとしましょう。仮にそのようなことが本当に起こったら、海外の投資家が日本の金融市場に対してネガティブな評価を下すことになりかねません。

 

 内資企業が積極的な外資企業のM&Aで業績を急拡大したケースがあります。その代表がダイキン工業でしょう。ダイキンは、井上礼之氏のリーダーシップの下、積極的に海外の空調メーカーを傘下に収め、単なる中堅空調メーカーから現在、世界一の空調メーカーとしてその繁栄を謳歌しています。また、セブン&アイも本家のアメリカのセブンイレブンを買収し、海外事業のさらなる拡大を実現しました。

 

 国内企業が積極的に海外に投資している一方、海外企業の参入に対して市場を無視した妨害を官庁がしてきたらどうなるでしょうか?予想されるのは国内で資金の出し手がいない時に、海外投資家に助けを求めても政治リスクにより、思ったような資金調達ができないことが想定されえます。また、一方的に国内企業が海外企業に投資していくと、円安がますます進むのではないでしょうか(国内企業が海外で稼いだ金を円に換えないケースで)?

 

 私は日産と国のカルロス・ゴーン氏に対するちょっとどうかなと思うやり方(別に日産の車が悪いと言っているわけではありません。ADバンはいい車です。)は、十分に海外企業側が日本の投資に及び腰になりうるケースだと思っています。

 

 前述の通り、一消費者として見ると、この買収提案の是非はわかりません。外資流の業務の効率化は日本の従業員と不和を起こし、消費者に不利益をもたらすかもしれません。ただ、日本政府が金融市場を活発させたいという志を持ちながら、外資に対して都合のいい時だけ頼りにするような姿勢を見せていたら、いざという時に格好のカモにされるでしょう。


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