英語勉強ということで原文で半年かけてゆっくり読んだ。私の英語力では誤読もあるし、何より読むのに長い期間をかけたので、失念していることが多く評論にはなりえないだろうと思う。
モームという作家は自他ともに認める通俗作家であり、本作も通俗小説としての特徴ともいえるドラマチックな展開が繰り広げられている。まず不満点から述べる。私はその通俗性を出すための、本作のストリックランドの偏狂的ともいえる絵に対す情熱の描写は、常軌を超えすぎて漫画的というかリアリティに欠けているように感じた。その人間性に共感できずに、作者の都合が作品の人物像に露呈されているように感じたら、その作品にあまりのめり込むことができない性質の私には、どうしても当初は高い評価をすることは出来なかった。
しかし、こんな悪い思いを書くだけなら、そもそも書かない方がいい。私はこの作品を読んだことは後々、財産になりうるなと感じたから、わざわざ書いているのである。
私が、モームの作家としての技術の高さを感じたのは最終章の最後の一節である。英語であるので日本語話者の私は完全な解釈ができたとは言えないし、その内容は、キリスト教社会の読者からしたら、あまり革新性もなく、凡庸的であるのかもしれない。しかし、母国語でない私からしたらこの締めは美しく感じたし、非常に心地いい読後感を得ることができた。そして結末により私のもやもやも受け入れることができたのだ。
私にとって幸運だったのは、この最後の一節を読んでいた時に聞いていた曲がmobyのIn This Worldだったことである。歌詞に含意されていることは私にはわからない。ただ感覚的に言うとこのシンガーの神への信仰を作品に反映(間違っているかも)されている曲と、本作品の最後の一節が私の読書に幸運にもシンクロされたのが、長い期間かけて読んだ私に対する何らかのギフトと思い込めたのが、後年一つの思い出として残るかもという期待がある。その感覚を読後直後に記録しているのも、私にとって何らかの価値があるだろうと思ったからで、そのため今日はこれを話題に選んだ。