日本経済新聞は独自記事として企業統合をスクープすることがあるが、稀に誤報になってしまうことがある。それが原因でネットにおいて経済に弱い経済新聞と嘲る風潮があるが、あくまでスクープの裏付けが乏しかったためであり、普段の経済記事から有用な知識を得られることは大いにある。そんな日経をよく理解して読めるようになると経済動向もある程度流れがわかるようになし、さらに経済だけに関わらず、世の中がどの方向に向かってるか(向かわせたいかというのもある)というのが日本のマスメディアの中でも特に掴みやすい新聞であると思う。
この日経をよく理解して読もうと思うとそれなりに前準備がいるだろう。具体的には会計学とマクロ経済学の基礎である。会計学は2級適度の日商簿記試験を合格しておいた方がいいし、それの応用で財務分析の基本知識があるとかなり捗る。マクロもある程度わかっているといいだろう。ただ偉そうに言っている私はどれも付け焼き刃の知識でしかなく頻繁に復習の必要に迫られるのだが。
財務分析の本は多数出版され直感的に訴えるわかりやすい商品が人気を呼ぶ。しかし本書のような少し学術的な基本教科書を選び精読することは決して時間の無駄として余計なコストにはならないだろう。本書をある程度、理解するレベルに達すれば会計学以外、例えばある分野における経済学の理解への橋渡しとなるし、会計学そのものの基本的な基礎知識を持っていると言う事ができるということも過言ではないだろう。当然、本書を理解出来れば日経もよく理解でき、少々高いこの新聞の値段からでも十二分に満足を得ることができることを保証する(?)
ここ数年の証券取引所の市場改革と金融行政の政策を追うとなったら特にROEやPBRの理解が必要だろう。ただROEは直感的に覚えるのは私にとっては容易だが、PBRは頻繁に忘れてしまうので本書を紐解き再読したのだが、本書の内容を頭に入れておくことが出来れば、さらにかなり高度な知識の応用の可能性を読者に与えてくれると改めて思った。1例をあげると社債発行の際に要求される企業格付けが、どのような仕組みで作られているのか説明されていることだ。ある数種の財務指標かつ分散と共分散の知識があれば、我々素人にも実際の格付けに近い分析結果が得られるということが記載され、改めて本書の有用性を理解した次第である。
以上の記述は潜在的な初学者にとってハードルとなり得るかもしれない。確かに少々基本的な会計知識と少し複雑な数式が出てくるが、とても手がでないと言ったようなものでなく、ある程度の訓練の習慣をつけている読者からしたら決して高い壁とはならないだろう。