Quantcast
Channel: リハビリ人間のよろずブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 98

新しい資本主義に向かって

$
0
0

 多くの方はその言葉も知らないかもしれません。岸田首相は就任以来、自身の経済政策を「新しい資本主義」というキャッチフレーズをつけ、日本経済の様々な課題に立ち向かう決心を表明しています。

 

 就任当初に意気込んでいたのが、3か月ごとに上場企業が求められていた四半期決算を廃止し、半期ごとの決算報告に集約するというものです。国際的な潮流に逆行するもので反対の声もありましたが、我らが権力者の岸田首相に歯向かうことは許されません。自身の実績として誇示している姿は拝見していませんが、今年度から、金融商品取引法で求められる四半期決算を廃止することになったそうです。

www.nikkei.com

  ただ完全に上場企業の四半期ごとの報告を廃止するのは投資家からの理解は得られないのでしょう。証券取引所が求める決算短信は内容を充実させて四半期ごとの報告を継続するようです。結局生煮え感が漂う改革となりましたが経理職のサラリーマンや監査法人で働く公認会計士は業務の負担が減ることになるのかもしれません。実態は知る由もないので想像ですが。

 

 日経の記事によると、日本は複数の決算書類を作成しなければならず(素人の私が思い浮かぶのは、決算短信金融商品取引法法人税法会社法でしょうか)その事務が煩雑で企業の負担の軽減につながるということです。岸田さんの目玉税策だったということには触れられていないのはなぜでしょうか?

 

 確かに働き方改革として経理職員の負担を減らすことは理にかなっているでしょう。ただ今回の改革(改悪だという意見もあると思います)では、金融商品取引法で求められていた監査法人のレビューが任意となっており、不正会計が行われていても投資家は決算短信を信じるほかなく、資本市場の信頼性を毀損させる可能性は十分あると言えるでしょう。

 

 現状を見てみると企業の不正会計は増加しているようです。

www.nikkei.com

 

  昨今の経済のトレンドは、企業が投資家の期待に応えるために少しでも多くの利益をあげ配当を出していくことです。そのため企業の不正会計において、利益をかさ増しする粉飾決算をする動機が高まっていると言えるかもしれません。この辺のことは岩波新書会計学の誕生」に詳しく載っています。ただこんな偉そうなこと言いながら私は内容を大分、失念しましたが。

 

 

半期ごとの監査でも不正会計は防げるのかもしれません。私は実務経験がないので何とも言えません。ただ、超短期ごとの監査は不正会計をする動機を小さくする可能性はあるでしょうし、不正会計が増加傾向にもかかわらず、大事件化していないのはこの短期の監査の効果が大きい可能性はあると思います。

 

 今回の改革で決算短信において監査のレビューは任意であるというのは前述の通りです。あえて監査を受ける上場企業も1~2割ほど存在するようです。決算短信金融商品取引法が求める報告書より締め切りが短いため該当企業は様々な工夫を凝らして対応しているようですが、仮に世間を揺るがす不正会計事件が起こったケースを想定してみましょう。企業は投資家からの信頼性を取り戻すため、レビューを自主的に受ける企業が増加するでしょうが、締め切りが短い中で従来より、より厳しい労働環境をもたらす可能性があることは留意しとくべきでしょう。

 

 そろそろ締めたいと思います。そもそも、岸田首相がこんなこと言いださなかったらこのような改革は行われなかったのは明らかですが、岸田首相の動機はなんだったのでしょうか?一般的に考えられるのは企業からの陳情でしょう。ただ、資本市場を意識する必要性の高まっている昨今、投資家の声を軽んじる上場企業の経営者は少数派のはずです。岸田さんは株式を資産として保有していないと公表しているのでナンセンスな邪知ですが、3か月ごとの株価の大きな変動に悩まさられる個人投資家に慈愛を授けようとしたのかもしれません。新しい資本主義とは岸田首相なりの人道支援なのかもしれませんね。

www.nikkei.com


Viewing all articles
Browse latest Browse all 98

Trending Articles