金利のある世界に戻り国債投資の妙味が高まっていますが、それと同時に債券価格の低下はバランスシートの毀損をもたらし、債券の需要家である金融機関は会計手法をどうとるかで将来の経営成績に関わってきます。昨日の日経関西の地方面においてそれに関する記事が出ていました。
この記事は、関西地銀各行は債券を満期保有に切り替え、債券価格を会計上は固定させて(もっといい表現ありますよね)評価損を最小限にしていくという戦略をとっているという主旨です。また、関西地銀の二行を取り上げていますが、それぞれのリスクへの備え方は今後の企業経営を観察するには良い材料になるのではないのかと思いました。
池田泉州ホールディングスは、かなり価格の低下リスクに備えているように思えます。足元で899憶の満期保有目的の債券を26年期末までに約1600億円まで積み上げる目標を立てています。池田泉州は米国債で多額の評価損を出した経験があり、それを踏まえてリスクをなるべく取りたくない姿勢をとっているように思われます。
一方、紀陽銀行は、前年と比べて増やしているものの、今年は70億円を満期保有目的にしていて、池田泉州と比較するとその差は歴然としています。三月期末の有価証券報告書を見てみると、両行の有価証券に対する満期保有目的債券の比率も当然ながら大きな差があるのは明らかでした(池田泉州は直近の数字とは差があるので数字は記載しませんがEDINETで確認しました)。
満期保有目的にしておくと価格変動リスクは抑えられますが、利回りが低いまま満期まで保有するとなると、金利が上がっていく環境で資金調達のコストの上昇にさらされていても機動的な対応が取れないデメリットがあります。
農林中央が先日、ポートフォリオを組み替えるために外債を減損し、巨額の損失を計上させました。シチュエーションは違いますが、金利の上昇が想定以上に大きくなる中で、機動的な対応をとれないとなると、資本の有効的な活用ができず、収益を圧迫する要因になりかねません。逆に機動的な対応を採用しても、その貸出金や債券が焦げ付く可能性があることは十分、留意しなければならないでしょう
今後、対照的なこの二行の業績を比較していくのは面白いかもしれません。