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ガルシア・マルケス作「百年の孤独」を読んで

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センチメンタルで散歩好きな私はよく音楽や、ラジオを聴きながら色んな所を歩き回るのですが、その時のヘビーローテーションは、散歩している風景の中に一緒に組み込まれて、後年、音とその風景が郷愁的な感覚として強く残っていることが多く、この辺ではあの音楽をよく聴いてたなと感じて勝手に懐かしなるという下品な言葉で言うと上品?な自慰に浸ります。

 


百年の孤独という作品は後々、私にとってこのような郷愁を思い起こさせる1冊になるのではという期待を抱かせる作品でした。

 


作品の背景は翻訳者である鼓直氏の解説が大変わかりやすく、そちらに全てを託します。

 


この作品では、人間の汗臭さ、血なまぐささ、泥臭さといった本能によって生まれるグロテスクな場面が多く描かれています。と言っても、野蛮な野性味だけが全面に押されているのではなく、またもや人間の直感によって産み出さられるような神秘性も同時に描かれ、グロテスクな箇所があっても作品全体には下品さを感じず、一流の芸術作品として昇華されているのではないのかと思いました。

 


この本能的な部分に下品さを醸し出させないことによって、嫌悪感を持つことなく作品を読み切ることができ、そこからつむぎ出される感傷めいた気持ちが断片的に体内、もしくは脳内に記憶され、5年後、10年後、あの人間の本能的、神秘的な部分にもう一度触れたいという郷愁を抱かさせ、再読の欲求や性的ではない自慰に浸れるのではと感じさせます。

 


この作品がラテンアメリカという、悲劇的でもあり、神秘的、そして失礼を承知でいうとアマゾンの奥地などから連想される原始的な側面を持つ地域から産まれたというのは、ある種必然的であり、近代文学の誕生地であり、先進地域である西欧出身の作家からは産まれえないものであったと感じさせます。

 


この作品は現代文学から産まれた神話と言ってもいいかもしれません。私は古典文学に全く知見がないのですが、イメージで言うと聖書みたいな残酷性が含まれながらも、どこか人を引き寄せる神秘性を持ち合わせていると言えばいいのでしょうか?

 

 

 


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