昨日付の日経で経団連会長の十倉氏は石破氏の経済政策に関して「非常に妥当で安心している」とかなり高く評価している旨の記事が掲載されていました。
この記事内で特筆すべき内容は、経団連が2020年代に最低賃金を1500円に引き上げるという石破氏の意欲的な政策に対し歓迎しているということだと思います。要するに、大企業は下請けの中小企業との価格交渉において、下請け企業の原価上昇分の価格転嫁を積極的に受け入れる覚悟はあるということを示したと見てよいのではないかと思います。
これは大きなトレンド転換でしょう。大企業が従来までのデフレに戻るのは企業経営にとって得策ではなく、むしろ仕入れや人件費のコストが上昇しても、消費が上がることの方が、企業業績の向上を目指せるという合意ができているのです。
当然、なかには人件費の増加により収支が悪化する企業も出てきて、企業の倒産、廃業が増加することも予想されます。ただ、経済理論的(きわめて自然科学的な)には市場の新陳代謝は決してネガティブなものではなく、むしろ新しいイノヴェーションが起こる絶好の機会になるのです。
ここからは本筋とそれます。ただ私は上記の自然科学的な経済現象によって産まれる市場の負け組に対し、単に負け犬だとか、低い生活水準で余生を送る生活を甘受しろとか無慈悲なことを言うつもりは毛頭ありません。これは、私の今の考察のテーマ(大げさ)である『尊厳と経済理論』において重要な問題です。この二律背反的な問題を解決を図ることが、『新しい資本主義』の実現に不可欠ではないのでしょうか?